アーミテージ・レポート第2弾

 


アーミテージ・レポートが発表されたという。いまさらアーミテージなんてとの思いもあるが、このレポートが米国のアジア外交において影響力をもっていることに疑いはない。代表執筆者がアーミテージで、ナイ元国防次官補、グリーン前国家安全保障会議アジア上級部長、キャンベル元国防次官補代理らがこれに加わっている。


リチャード・アーミテージは第一期ブッシュ政権パウエル国務長官の右腕として国務副長官を務めた元軍人だ。80年代には国防次官補を務めていたから、彼は国務省国防総省に太いパイプを持っている。ラムズフェルド前国防長官の後任との噂もあったが、現在(06年4月から)は石油大手コノコフィリップス社外取締役を務める石油業界の人間で、コノコフィリップスアーミテージを迎え入れる直前の06年3月31日にバーリントン・リソーシズを4兆円を超える金額での買収を完了し、全米最大のガス生産企業となり、米国ではエクソンモービルシェブロンに続く業界3位の石油大手。(参照「アーミテージがコノコフィリップスの社外取締役に就任」
アーミテージの後任として国務副長官に就いていたロバート・ゼーリックは昨年国務副長官を辞任し、ゴールドマン・サックスに雇われている。


「アジア地域の管理というのは、アジア人の感情をどこかで理解していないとできない仕事である。」「アーミテージは国務副長官の職を退いたが、それでも対日政策に彼が一定の影響力を持ち続けることは間違いない。それほど、彼が頂点に立つ『アナポリス・グループ』は強力なのだ。」(『ジャパン・ハンドラーズ』P.182)


「真の国力とは経済的なものであり、その国力をアメリカ人はもはや持っていない。超大国アメリカというのは、習慣で持っているだけの神話にすぎない。」「日本はドイツに次いで、第二次世界大戦後に生まれたアメリカ・システムの第二の戦略的支柱である。ドイツと日本という輸出産業の二大経済大国を統制下に置いているということが、‥‥世界に対するアメリカの権力の現実の姿なのである。ドイツはアメリカの後見から独立しつつある。」(『帝国以後』P.6)

アメリカとの関係は日本人にとって未だかつてない複雑さに支配されたものとならざるを得ない。目下のところアジアにおけるアメリカの安全保障システムへの依存の度合いが高いが故に、アメリカの軍事的行動様式のある程度の野蛮な側面は、ヨーロッパ人以上に自覚してもいるのである。もしかしたらアメリカの戦費に日本が財政的協力をしないというだけでも、アメリカ・システムの崩壊には十分な貢献となるかも知れない。」(『帝国以後』P.7)


トッドの論理は“アメリカは世界を必要とするが、世界はアメリカを必要としない”というものだが、アメリカに大きく依存している日本はアメリカを必要としているのが現実の姿だから、「対日戦略」としてのアーミテージ・レポートが日本に大きな影響を与えてきた。経済的には輸出マシーンとしての日本はアメリカに依存し、軍事的または政治的にもアメリカが日本に及ぼす影響力はきわめて強い。

今回の「アーミテージ・リポート第2弾」は2020年までの対アジア政策への提言で、日米同盟を軸としている日本はこれを無視できず、リポートでは「日本の防衛費は世界で5本の指に入るが、GNP比で見ると134番目にすぎない」として国防予算の増額を求めているようだから、今後の日本は防衛予算を増額していくことになるのだろう。つまりこれは、日本はもっとアメリカの兵器を買いなさいという意味でもある。

民主党の賛成もあって防衛庁防衛省になったから、防衛相は首相を通さずに予算を要求できるようになった。この点からでも防衛予算が今後増額していくのは必至の情勢で、アーミテージ・レポートの要求をサポートしている格好になっている。防衛省への格上げは、アーミテージやグリーンらが「レポート」に先立って自民党民主党に根回しして実現させた疑いが濃いと、私は見ている。




「(マイケル)グリーンは民主党共和党の両党遣いで、また日本でも自民党民主党を問わず政界に強い影響力を持っている人物である。」(『ジャパン・ハンドラーズ』P.183)

「(マイケル・グリーンは)筋金入りの日本専門家である。グリーンは日本の安全保障を専門分野とし、『研究』という名の“スパイ活動”を続けていった。」(『ジャパン・ハンドラーズ』P.186)

アーミテージも軍人出身だけに、軍需産業とのかかわりは深い。軍需メーカー、ゼネラル・ダイナミックス社の重役経験があるほか、自らコンサルタント会社を設立し、ビジネス活動に余念がない。」(『ジャパン・ハンドラーズ』P.187)

「(グリーンは)多くの日本政治家とのネットワーク(命令系統)を持っている。その彼が、外交問題評議会の研究員時代に同僚として交友したのが民主党長島昭久衆議院議員である。長島議員は、民主党の1、2を争う外交族…」(『ジャパン・ハンドラーズ』P.189)


以下に記事。

アーミテージ・リポート第2弾が発表される

第1次ブッシュ政権で国務副長官を務め、東アジアの安全保障に詳しいアーミテージ氏が16日、2020年までの対アジア政策をまとめた、いわゆる「アーミテージ・リポート」第2弾を発表した。「北朝鮮の核開発に警戒を解くべきではない」としている。

2000年に発表されたアーミテージ・リポートは、その後、アーミテージ氏が政権内で実践し、日米同盟強化につながった。注目された7年ぶりのリポートでもこれを踏襲しているが、中でも北朝鮮に対する警戒感が目を引く。北朝鮮が2020年以降も核兵器を開発し続ける可能性を指摘し、「核問題は朝鮮半島の統一でしか解決できない可能性が高まっている」としている。

アーミテージ氏は、日本が安全保障面の役割をさらに果たすために、「憲法改正論議は奨励される」とした上で、アメリカ議会に反対論が根強い最新ステルス戦闘機の日本への輸出についてもアメリカは、F22のような最新の戦闘機を日本が活用できるようにするべきだ。嘉手納基地などに配備するだけでなく、自ら活用できなくてはいけない」と述べた。

今回のリポートは、この7年間に急成長した中国とインドを強く意識した内容となっており、日米同盟のさらなる強化を提言している。

[17日17時49分更新]


http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn/20070217

アーミテージ氏ら、日米関係について提言

アーミテージ元国務副長官など日本に詳しい超党派のグループが、2020年までの日米同盟についてのレポートをまとめ、北朝鮮の核問題解決のためにも、日米が緊密に協力して中国に働きかけていくことが重要だと提言しました。

16日公表された提言は、日米が緊密に協力し、「中国が責任ある国となるよう働きかけるべきだ」として、中国が北朝鮮やイランなどに対して行いを改めるよう影響力を行使する必要があるとしています。

北朝鮮が完全に核を放棄する能力と意思を持っているのか、大変疑わしいと思っています」(アーミテージ元国務副長官)

また、提言は、日米の防衛協力の重要性を強調し、「日本の防衛費は世界で5本の指に入るが、GNP比で見ると134番目にすぎない」と、国防予算の増額を求めています。

アーミテージ氏らが提言を行うのはこれが2回目で、前回は日本国内の安全保障論議にも影響を与えました。(17日06:29)


http://news.tbs.co.jp/headline/tbs_headline3496060.html

日米、中国やインドと連携を・アーミテージ氏ら報告書

米国のアーミテージ元国務副長官ら超党派有識者グループは16日、日米同盟に関する第2次報告書を発表した。アジア地域の安定のため、日米両国に中国を加えた3カ国の連携が重要と強調した。インドについても「戦略的な関係」の構築を訴えた。日米関係では軍事面の協力強化とともに、日米自由貿易協定(FTA)の締結を提言した。

「日米同盟―2020年までの正しいアジアのために」と題した報告書はアーミテージ氏とナイ元国防次官補が共同執筆した。2000年にアーミテージ氏らが日米同盟の強化を盛り込んだ第1次報告書は、翌年発足したブッシュ政権アジア外交の指針となった。日米同盟を軸に中国、インドなどとの多国間協力を提唱した今回の報告書も、ブッシュ政権の政策に一定の影響を与えるとみられる。(ワシントン=丸谷浩史) (11:24)


http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070217AT2M1700T17022007.html

最新鋭ステルスF22、嘉手納に2機到着――米国外で初の配備


米国外で初めて配備された米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22A

=17日、沖縄県の米軍嘉手納基地〔共同〕


米軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが17日正午すぎ、沖縄県の米軍嘉手納基地に到着した。同機が米国外に配備されるのは初めてで、90―120日の一時配備となる見通し。この日は先遣隊2機が飛来。残り10機は18日午後にも合流する予定で、全12機の配備となる。

米政府は配備理由を「極東における米軍の適切な抑止体制を維持するため」と日本政府に説明している。

F22Aはレーダーに捕捉されにくいステルス性が特徴で、超音速での高い運動性や地上への攻撃能力がある。F15などの後継機として開発された。

米空軍によると、12機は米バージニア州ラングレー基地の所属。パイロットや整備要員など約250人が嘉手納基地に派遣される。

沖縄県では、地元の嘉手納町議会が「一層の基地負担増だ」として配備中止を求める抗議決議を全会一致で可決するなど、反発が広がっている。

F22Aは当初、今月10日に嘉手納基地に到着する予定だったが、航行システム関連のコンピューターソフトの不具合などを理由に配備が遅れていた。〔共同〕 (16:35)


http://www.nikkei.co.jp/news/main/im20070217SSXKG013917022007.html

F22嘉手納に飛来 米国外への配備は初
三連協、恒常化を懸念

沖縄タイムス 2007年2月17日(土) 夕刊 1面


嘉手納基地に着陸するステルス戦闘機F22Aラプター

=17日午後0時7分、米軍嘉手納基地(下地広也撮影)


【嘉手納】米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプター二機が十七日正午すぎ、米軍嘉手納基地に到着した。同機が米国外に配備されるのは初めてで、十二機が三カ月程度配備される予定。残る十機は十八日午後に飛来するとみられる。配備中止を求めてきた沖縄市嘉手納町北谷町の三首長らで構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」の宮城篤実会長(嘉手納町長)らは「これまで同様、配備反対の姿勢は変わらない」などと反発を強めている。

F22戦闘機の飛来について東門美津子沖縄市長は「多くの県民が反対する中の配備は残念。配備が恒常化することも懸念される。負担軽減が見えない中での配備であり、国に言うべきことは主張していきたい」と反発。野国昌春北谷町長は「F22の配備は嘉手納基地の機能強化と言わざるを得ない。困った問題だ。常駐ではないとされているが、そうとも言えないという話もある」と警戒感を漂わせた。


宮城嘉手納町長は「これまでも反対の姿勢を打ち出してきた」と、従来の姿勢を堅持するとしている。

嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「地方自治体の抗議を押し切っての配備だ。速やかな撤去を求めたい」とし、週明けにも基地特委を開催する考えを示した。

同機の飛来直後、KC10空中給油機一機と民間機一機がそれぞれ着陸した。F22の給油支援と米軍要員、家族らの輸送に当たったとみられる。

F22は、F15戦闘機の後継機として開発され、敵レーダーに補足されにくいステルス機能を持つ。一時配備されるのは米バージニア州ラングレー空軍基地第二十七戦闘中隊所属で、操縦士を含む要員約二百五十人も派遣される。

同基地は「太平洋地域のローテーション配備の一環」と発表しており、今後も定期的に配備される可能性がある。

F22配備について、米軍は当初、十日に飛来するとしたが「天候不良」や「方向誘導(ナビゲーション)システムに影響するソフトウエアの不具合」を理由に二度、延期した。


http://www.okinawatimes.co.jp/day/200702171700_01.html

※ 以上、2月18日0時にアップ。