グリーンスパンがドイツ銀行のシニア・アドバイザーに

 


ドイツ銀行FRBの前議長アラン・グリーンスパンコンサルタント(senior adviser)として起用したと発表した。グリーンスパンドイツ銀行に雇われたようだ。ドイツ銀行のCEOはヨゼフ・アッカーマン。


06年2月、英財務省ゴードン・ブラウン財務相の名誉顧問にグリーンスパンが就任すると発表したが、グリーンスパンはこの名誉顧問を無料で引き受けた。現在ゴードン・ブラウンは英首相。


Sir Alan, Britain's Newest Economic Adviser


ドイツ銀行を設立したのはジーメンスであるが、このドイツ最大の銀行は過去にモルガン・グレンフェルとバンカーズ・トラスト(旧JPモルガン商会)を買収している。

05年に起こったモルガン・スタンレーの“内紛”では多くの幹部がモルスタを辞め、株式トレーダーらはドイツ銀行に移籍した。この“内紛”でバーゼルCEOが辞任し、ジョン・マックがCEOに就任した。01年にモルスタを退社しクレディ・スイスのCEOを経験したマックが、再びモルスタに舞い戻ったことになる。昨年末にゴールドマンやモルスタのCEOへの巨額ボーナスが騒がれていたのは記憶に新しい。


このようにドイツ銀行には、モルガン系の細胞が大量に入り込んでいる。ドイツ銀行の実体は“モルガン銀行”なんじゃないのかと思えてくる。グリーンスパンFRB議長に就任する前、JPモルガンの社外取締役をつとめていた。また、モルガン・ギャランティ・トラストの77年と78年にグリーンスパンの名前がある。つまりFRB議長に就任する前のグリーンスパンは、モルガン系の金融機関に雇われていた。そして今回、ドイツ銀行という名の“モルガン銀行”に雇われたと見ることができる。


以下、関連記事を2件。記事の下にグリーンスパンが66年に書いた論文を紹介する。

ドイツ銀:証券部門のコンサルタントにグリースパン氏を起用(2)

8月13日(ブルームバーグ):ドイツ最大の銀行、ドイツ銀行は13日、証券部門のコンサルタントとしてアラン・グリーンスパン米連邦準備制度理事会FRB)議長(81)を起用したと発表した。

ドイツ銀は電子メールで配布した資料で、グリースパン氏は、同行の法人・投資銀行部門と同部門の顧客に「助言と洞察力」を提供することになると説明した。

FRB議長を2006年1月に退任したグリーンスパン氏は既に、欧州最大の保険会社、ドイツのアリアンツ傘下の債券ファンド最大手、米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のアドバイザーを務めている。

ドイツ銀のヨゼフ・アッカーマン最高経営責任者(CEO)は資料で、「現代の金融システムを設計した1人であるというポジションがグリーンスパン氏に独特の視点を与えており、それがわれわれの顧客が非常に重要なリスク運用の判断を下す際の助けとなる」と述べた。

更新日時 : 2007/08/13 18:29 JST

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=aaZWR0K2HuHI

ドイツ銀、グリーンスパン氏をアドバイザーに
日本経済新聞 - 2007年8月13日

【フランクフルト=石井一乗】ドイツ銀行は13日、アラン・グリーンスパン前米連邦準備理事会(FRB)議長をシニアアドバイザーとして迎え入れたと発表した。同行の投資銀行部門やその顧客に、市場に関する見解などを助言する。同行は相場の見通しが不安定になる中で、同氏の意見を投資決定に役立てる。ヨゼフ・アッカーマン頭取は「グリーンスパン氏の見識が、顧客がリスク管理にかかわる決断をする際の手助けになるだろう」とコメントした。(23:00)

http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070813AT2M1301913082007.html

ジーメンスとドイツ銀行


  



次の文書はグリーンスパンが1966年に書いた論文「金と経済的自由」の一節で、『いまなぜ金復活なのか』フェルディナント・リップス(著)からの引用。グリーンスパンは26年生まれだから、このとき40歳。


『金と経済的自由とは不可分である。金本位制という制度下でなければ、インフレーションという名の略奪から我々の資産を守ることはできない。我々の財産を守るには金が欠かせないのである。このことをしっかり理解していれば、政治家たちが金本位制に反感を抱いている理由が容易に理解できるだろう。』

FRBアメリカの銀行群に紙幣を追加投入すれば、アメリカの金利をイギリスのそれと同じ水準まで低下させることができるだろう。そうなれば、イギリスからの金の流出は止まり、またイギリス国内の金利上昇という政治的難題も回避することができる。当局は、そう考えた。FRBはこの試みに成功して、金の流出は止まったが、その過程で世界経済を崩壊させてしまったのである。FRBが経済に供与した「信用」は、株式市場へとなだれ込み、奇怪なまでの投機熱に火をつけてしまった。FRBは遅まきながらも、過剰な信用を吸い上げようとし、遂には投機熱を冷ますことに成功する。しかし、時すでに遅し。投機が生んだ不均衡は1929年にはもはや如何ともしがたいところまで拡大しており、FRBの試みは浮かれた景気感に冷や水を浴びせるかたちとなり、結果、アメリカの経済は崩壊してしまった』


著者フェルディナント・リップスのことを、チューリヒロスチャイルド銀行の設立に参画してマネージング・ディレクターに就任した人物として訳者は紹介しており、本書の帯には「ロスチャイルドの金庫番」と書いてある。そのリップスは本書の中(113〜114ページ)で次ぎように述べている。


中央銀行の役割とは、自国の通貨の健全性を維持することである。少なくとも、それが世間一般に流通している建前だ。一国の通貨の大半は、銀行預金という形をとる。そして預金の源泉は、銀行の信用供与だ。いわゆる信用創造である。銀行は、信用創造を通じて通貨を生み出すという点で、公的な役割を担っているのである。

ところが銀行は私企業であり、私企業の常として、利益を求めて拡大する。だが、ひたすら拡大を続ければ、いずれは破綻が訪れる。そして、通貨を生み出す銀行が破綻すれば、経済全体はシステミック・リスク、つまり共倒れの危険にさらされることになる。そうならないためには、銀行の拡大が節度を保つよう、抑制する必要がある。それこそが、中央銀行の役目のはずである。

ところが銀行界は、個々の銀行の拡大を抑えるどころか、逆に破綻の心配なしに膨張、拡大できるように通貨を供給し続けることを、中央銀行に強く求めたのである。中央銀行の真の役目は、無軌道な拡大の末に銀行のバランスシートが毀損した際に、破綻が生じないよう流動性を供給することだとされたのだ。中央銀行は「最後の貸し手」として、ひたすら銀行を救済してまわるものとされた。中央銀行は、本来であれば銀行がバランスシートを健全に保つために貸し出しを縮小させなければならない時に、銀行が膨張することを認めたどころか、かえってそれを後押しするようになったのである。

たとえばアメリカに連邦準備制度が誕生したのは1913年だったが、銀行界がFRBを設立した本当の理由は、表向きのものとは正反対だった。公共の利益のために自らの利益を抑制するための機関を作るのではなく、際限なく膨張することを可能にしたうえで、失敗があった際には助けてくれる、打ち出の小槌のような組織を作ることこそが、目的だったのだ。』