「スペイン銀の米進出続く」と「エンデサをめぐる動き」

 


■ スペインのバンコ・ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリアBBVAが96億ドルでコンパス・バンクシェアーズを買収することで「スペイン銀の米進出続く」とウォール・ストリート・ジャーナルが書いている。BBVAのCEOフランシスコ・ゴンザレスは「2008年末までにBBVAを世界最大級の銀行にしたい」と述べ、さらなる拡大をも示唆しているようだ。

BBVAは、1988年にビルバオビスカヤが合併して誕生したBBVが、2000年にアルヘンタリアを吸収したことで現在の形になったスペインで第2位の銀行だ。スペインのトップはサンタンデール銀行BSCH)だが、サンタンデールの会長エミリオ・ボティンは新生銀行の社外取締役を現在も務めている。

「スペインでトップのリッチマン」といわれるボティン会長が新生銀行社外取締役を務めていることが、サンタンデールの性質の現われだと見て取れる。サンタンデールは英アビー・ナショナルを買収するなど積極的に拡大路線を走っていたので、05年には欧州銀のトップ、つまりヨーロッパ最大の銀行になったこともあるし、フォーブスは06年の「企業番付」でサンタンデールを全世界の企業の中で19位にランクしていた。BBVAは58位。三菱UFJフィナンシャル・グループが62位だったりゴールドマン・サックスが42位だったりするんだから、サンタンデールの19位というのがかなりの高評価だということが判る。



「サンタンデール銀行」
【2006年版】世界優良企業番付



ウォール・ストリート・ジャーナルによると、時価総額サンタンデールが9位。BBVAは15位になったらしい。スペイン系の銀行は元気が良さそうだが、最近はスペインで電力最大手のエンデサが買収戦の標的になっており、エンデサに対しドイツのエーオンが2月2日にこれまでの買収提示額から410億ユーロ(約6兆5千億円)に引き上げたと発表したことから、エンデサを買収するのはエーオンになりそうだと騒いでいる。


エーオンが06年にガス・ナトゥラルによるTOB(21.3ユーロ)に対抗してエンデサにTOBを仕掛けたとき、エーオンの付値はガス・ナトゥラルの付値より約3割も高い27.5ユーロだった。このときスペイン政府はエーオンによるTOBに反対を表明した。サパテロ首相は、エーオンに「スペインの国内法により、政府は外国資本によるエネルギー企業買収を阻止できる」と通告。それに対しエーオンは「TOBの是非について判断できるのはEUだけだ」と応じた。

そして欧州委員会が06年9月26日、「スペイン政府が外資による自国企業の買収を規制しようとしたのは、EU法令に違反する」と決定した。「合併認可権は欧州委だけが持つというEU法令に違反する」と。この決定により、スペイン政府は9月26日、エーオンによるエンデサの買収を容認する方針に転換。エーオンは「欧州委の判断を歓迎する」との声明を発表。スペインの産業相も同日、「EUのルールはスペインのルール」と発言するに至った。さらに同日、エーオンはエンデサ1株あたりの金額を28%値上げて35ユーロとした。欧州委員会の決定で、エーオンがエンデサを買収する最大の障壁が取り除かれたことになる。

そして2月2日にエーオンが買収提示額を410億ユーロに引き上げ、これがエンデサに対する最終提示額となっている。1月にはスエズがエンデサ買収に名乗りをあげるとの噂を取り上げた記事もあったが、いまのところスエズに関する続報は出てきてない。

欧州連合(EU)に加盟する25ヵ国の大部分は、07年7月までに国内電力市場の完全自由化を終える予定だ。読売新聞は電力市場自由化によって「競争激化を見込んだ企業が、規模拡大を急いでいる」と書いてる。


大統領選の結果にもよるが、フランスのガス公社がスエズと合併する方向で動いており、これが実現したら現在売上高で欧州最大のエーオンを上回り、欧州で最大のエネルギー企業が誕生する。エーオンがスペインのエンデサを買収できれば、エーオンは欧州最大という地位を死守できることになる。


もともと「スエズとガス公社を合併させる」とフランス首相が発表した経緯は、イタリアのエネルがスエズを買収しようとしたことから始まっている(参照「スエズと仏ガス公社が合併へ」)。欧州ではドイツとフランスが巨大企業を有していることから、スペインと合わせて両国の動きからも目を離せない。


以下に記事を3件。

【特別編】EU電力市場、来夏自由化へ

欧州で、エネルギー企業のM&A(買収・合併)が活発だ。(ロンドン 中村宏之)


規模拡大が生命線…エネルギー企業、相次ぎM&A


欧州連合(EU)の加盟25か国の大部分は2007年7月までに、国内電力市場の完全自由化を終えるため、競争激化を見込んだ企業が、規模拡大を急いでいる。エネルギー安全保障の観点から、政府がM&Aに介入するケースも出ている。


◆拡大競争


スペインの電力大手イベルドローラは11月28日、英同業のスコティッシュ・パワー(SP)を買収することで合意したと発表した。買収総額は172億ユーロ(約2兆6000億円)で、実現すれば売上高は欧州で十指に入る電力会社となる。イベルドローラのイグナシオ・ガラン会長は「欧州電力市場で重要な地位を占める」と意気込む。

その2週間前の11月14日には、EUの行政執行機関である欧州委員会が、フランスの大手電力・エネルギー企業スエズと同国ガス最大手GDFの合併を承認した。合併後の売上高は独イーオンを抜き、欧州のエネルギー企業で最大となる。合併を主導したとされるドビルパン仏首相は「世界屈指のエネルギー企業をつくる」と宣言した。

イーオンもスペインの電力最大手エンデサに買収を提案し、最大手の座を死守する構えを見せている。

エンデサに対しては、地元スペインの建設大手アクシオーナも株式取得を狙っており、再編ドミノはエネルギー業界の外にも波及し始めている。


◆伊仏の危機感


合従連衡が相次ぐ背景には、EUが進める電力小売り市場の自由化がある。EUの当初加盟15か国では、すでにイギリスやドイツなど10か国が完全自由化に踏み切り、国内電力市場を開放した。フランス、イタリアなど5か国も07年7月までに、自国の電力市場を完全開放しなければならない。

特に危機感が強いのは、自由化が遅れているフランスとイタリアの企業だ。ライバル企業が自国市場に参入する前に規模拡大を図ろうと、今年2月には、伊電力大手エネルが仏スエズを買収する意向を表明した。これに仏政府は即座に介入し、4日後にはスエズとGDFの経営統合をまとめた。イタリアのベルルスコーニ前首相は「EUは(仏政府の決定に)介入すべきだ」と不満をぶちまけた。

一方、一足早く自由化を済ませた結果、国内市場が寡占化したドイツやスペインは、さらなる基盤固めのために、国境を越えた再編を仕掛けている。


◆他山の石


各国企業が拡大路線に走るのは、1990年代後半に世界に先駆けて電力自由化に踏み切った英国が他山の石となっているためだ。

英国では自由化後に、国内電力企業が相次いで外資に買収され、国内電力6大グループのうち、2社がドイツ系、1社がフランス系になった。イベルドローラのSP買収で、4グループが外資系となる。各国がイギリスの経験から学んだのは、「攻撃は最大の防御」という教訓だった。


◆ロシアの影


見逃せないのが、EUのロシアへの対抗意識だ。

2月初旬、英国各紙が「ロシアの政府系のエネルギー企業体ガスプロムが英エネルギー大手のセントリカの買収を計画している」と報じると、英国だけでなく欧州全体に衝撃が走った。

英政府は、当時のアラン・ジョンソン貿易産業相を中心に買収が英国のエネルギー部門に与える影響についての想定や試算を繰り返し、一時は政府内で買収阻止のための法改正の議論までされた。

ガスプロムが買収を否定したことで騒ぎは沈静化したが、EU内には、エネルギー価格の高騰で潤沢な資金を手中にしているロシアが域内のエネルギー企業に買収を仕掛けてくることへの危機感が高まっている。欧州委のバローゾ委員長は「欧州全体を代表するようなエネルギー企業が4〜5社は必要」(フィナンシャル・タイムズ紙)と述べ、ロシアなどに対抗できる交渉力を持つ有力なエネルギー企業が必要との考えを示している。

(2006年12月21日 読売新聞)


http://job.yomiuri.co.jp/news/special/ne_sp_06122101.cfm

BBVAが米コンパス買収で合意、スペイン銀の米進出続く
2007年2月20日(火)

マドリードウォール・ストリート・ジャーナル)スペインのビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行BBVA)は16日、米テキサス州などで事業展開する銀行持ち株会社コンパス・バンクシェアーズを96億ドルで買収することで合意したと発表した。これによりBBVAは、市場が急成長しているテキサス州の支店163店を含め、米国の南部から西部にかけての数百店を獲得する。また、テキサス州での上位2行であるバンク・オブ・アメリカJPモルガン・チェースに立ち向かうことになる。

これで、スペインの主要個人向け銀行2行が、世界のマイナーリーグから、世界最大級で最も効率が良く、最も収益性の高い銀行の仲間入りを果たした。スペインのサンタンデール・セントラル・イスパノ銀行(BSCH)は昨年、フィラデルフィアに本拠を置き9州で支店約800店を持つソブリン・バンコープの株式25%を取得した。

BBVAのフランシスコ・ゴンザレス最高経営責任者(CEO)は買収合意発表で「BBVAは基本的な個人向け銀行業務で米シティグループJPモルガン・チェースよりはるかに進んでいる」と強気の発言をした。

BBVABSCHは買収を重ねており、時価総額でみるとBBVAは世界15位、BSCHは同9位となった。両行とも先月、過去最高益を上げた2006年通期決算を発表している。

BSCHは、中南米と英国での事業拡大により、過去10年で資産を8倍に増やした。それでも、収益性をみるうえで重要な指標である株主資本利益率ROE)は1996年の約14%から約21%に上昇した。BSCHより資産規模がやや小さいBBVAROEは約24%。この点で両行のパフォーマンスは、シティグループ、バンカメ、英銀大手HSBCホールディングスを上回っている。

ただBBVABSCHの株価は、おとなしい戦略をとっている同業他社と同様の動向をみせている。市場は両行が金額の高い買収を続けるとみているためだ。マドリード証券取引所でのBBVAの株価は、コンパス・バンクシェアーズ買収合意発表を受け2.4%下落した。ニューヨーク証券取引所で取引されている米国預託証券ADR)の終値は前日比0.66ドル(2.52%)安の25.57ドル。ただその後の時間外取引では上げに転じ、25.85ドルで取引された。コンパス株の終値は同4.33ドル(6.52%)高の70.70ドル。

BBVAにとって、コンパス買収は過去最大規模の買収となる。ゴンザレス氏は「2008年末までにBBVAを世界最大級の銀行にしたい」としている。BSCHは、ソブリン買収後、買収はもうしないとの方針を示していた。だが今月、イタリア3位の銀行カピタリアの株式2%を取得し、買収路線に復帰するのではないかとの懸念が再燃した。

スペインの銀行の営業効率が高いのは、本国での競争が過酷なためだ。各行は生き残るために事業を徹底的に見直した。1990年代前半に新たなコンピューターシステムに多額の投資をしたことが現在役立っている。

こうしたことから、BBVABSCHは欧米の銀行に比べ、顧客1人に販売する商品の種類が多い。この結果、利益100ユーロ(130ドル)を得るための費用はBBVAが43ユーロ、BSCHは48ユーロで済んでいる。米南部のサンベルト地帯で最も経営効率が良い2行とされている、HSBCは50ユーロ、コンパスは55ユーロかかっている。

BBVABSCHはまた、リスク管理など、ほかの分野にも積極的に投資している。不良債権比率は中南米部門も含め1%未満と、目を見張る水準。

BBVAは、コンピューターシステムを利用してメキシコの銀行システムを変え、過去2年で400万人の顧客を獲得した。1990年代の金融危機を克服後、銀行サービスを多くの人々に広めた。給料を預金し支払いに使っている信用口座を管理する費用は少なくて済み、利益率は高い。

BBVAは2年前に買収によって米国に進出した。メキシコからの移民が、メキシコにいる親族が保有するBBVAの口座に送金することを期待したもの。

ゴンザレス氏は、今後はテキサス州の富裕層も顧客に取り込みたい考え。同州には主力銀行といえる銀行がなく、競争が最も激しい地域の1つ。ただ、BBVAのドル収入の割合が増えると、ドルの対ユーロ相場下落の影響が大きくなるリスクが増えることにもなる。


http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djBLS0627.html

スペイン最大手行サンタンデール、米銀の20%を取得=2年後の買収交渉権も

ライブドア・ニュース 2005年10月25日】− AP通信によると、スペインの銀行最大手サンタンデール・セントラル・イスパノ銀行は24日、米フィラデルフィアに本社を置くソブリン・バンコープの株式の20%を24億ドル(約2770億円)で取得すると発表した。一方、ソブリンは、ニューヨーク市のインディペンデンス・コミュニティ・バンクを36億ドル(約4150億円)で買収することを明らかにした。同社は、ニューヨーク市内で顧客拡大を目指す方針で、同社株の売却で調達した資金も活用する。

サンタンデールは、今回の合意で、2年後にソブリンを買収する交渉権を持つほか、ソブリン取締役会に役員2人を派遣することにしている。一方、ソブリンのジェイ・シズー会長兼CEO(最高経営責任者)は、サンタンデールの取締役会に入る予定。サンタンデールは、1991年にファースト・フィデリティ・バンコープの株式を取得し、米国のリテールバンキング市場に参入したものの、5年後に同株式を売却して撤退しており、今回のソブリンへの出資で同市場に再参入する。

一方、ソブリンの発行済み株式の7.3%を保有する米投資ファンドのリレーショナル・インベスターズは、ソブリン取締役会に役員2人を派遣することを狙っており、サンタンデールは、今回の合意でソブリンの「ホワイトナイト」となる可能性がある。リレーショナルは、ソブリンの株価や幹部報酬などについて不満を表明している。【了】


http://news.livedoor.com/article/detail/1456541/