エーオンがエンデサ買収を断念
■ 1年を超える長期戦になっていたエンデサ買収戦だが、エーオンがエンデサ買収を断念する形で、エンデサをめぐる攻防に決着がついたようだ。
エネルギー企業に関する大きな動きは他のブログで取り上げてきたし、スエズについてもブログやミクシィのコミュにあれこれ書いてきたし、エンデサ買収戦についてはこのブログでも取り上げてきたから、詳しいことはここでは省略する。今回エーオンはエンデサ買収戦に敗北したが、エンデサがもつ100億ユーロ相当の資産を取得するそうだ。
● 「スペイン銀の米進出続く」と「エンデサをめぐる動き」(2007-02-20)
● エンデサ買収戦にエネルが参入(2007-03-01)
● メディオバンカ(2007-03-02)
● ガスプロムの時価総額(ガスプロムに関するリンクも参照)
● スエズと仏ガス公社が合併へ
● ビルダーバーグ会議(エティエンヌ・ダヴィニオンのトピック参照)
スペイン政府の意向に協力する形でエンデサ買収戦にエネルが参入してきたことは意外だったが、シュレーダー前首相の動きにも現われているようにドイツはロシア(ガスプロム)と、フランス(スエズ)はベルギーと、イタリア(エネル)はスペインと‥‥といった具合にまとまりつつある。このような欧州のエネルギー企業再編という流れに乗っていないのがイギリスということになるが、ドビルパン首相による「世界屈指のエネルギー企業をつくる」との宣言があっても実質イギリスは沈黙したままである。
イギリスでは、国内電力6大グループのうち、2社がドイツ系、1社がフランス系、そして昨年11月末にイベルドローラがスコティッシュ・パワーを買収することで合意したと発表されたので、さらに1社がスペイン系ということになり、6大グループのうち4グループが外資系となっている。去年イギリス最大手のセントリカがガスプロムに買収されるかもという噂が出たときには、英政府は「買収阻止のための法改正」を真剣に議論していたから、外資による買収の脅威といった危機感を抱いていることは間違いないだろう。
エーオンがエンデサ買収を諦め、エンデサが事実上エネルの傘下企業になることで、欧州におけるエネルギー企業再編の動きもしばらくは落ち着きを見せるのだろうが、スエズがエネルに買収されそうになるとフランス政府がそれを阻止し、エンデサがエーオンに買収されそうになるとスペイン政府がそこに介入するといったように、またドイツでも「フォルクスワーゲンがポルシェの傘下へ」のように、自国企業を外国企業による買収の脅威から保護する「経済ナショナリズム」が存在することを見てきた。EUのように通貨を統合した国々でも、“国策企業”の間にはこれだけはっきりと国境が存在するのである。
「欧州と話がしたいんだが、いったい、誰に電話すればいいのか?」(ヘンリー・キッシンジャー)
欧州委員会は、スペイン政府が、エーオンによるエンデサの買収に介入したとして、欧州司法裁判所にスペインを提訴したそうだ。
以下に記事を5件。
独電力エーオン、エンデサへの買収提案撤回−見返りに資産取得へ
4月2日(ブルームバーグ):ドイツ最大の電力会社エーオンは2日、同業でスペイン最大手のエンデサに提示していた424億ユーロ(約6兆7000億円)の買収案を撤回したことを明らかにした。これにより、イタリア電力最大手のエネルとスペインの建設会社アクシオナによるエンデサ買収の障害が取り除かれたことになる。
エーオンの発表文によると、同社は買収案撤回の見返りとして、エネルとアクシオナがエンデサ買収に成功した場合、エンデサの資産100億ユーロ相当を取得することでも合意した。
エーオンのウルフ・ベルノタット最高経営責任者(CEO)が買収提案を取り下げたのは過去2年間で2回目。2005年には、英スコティッシュパワー買収を断念した。エネルは、エンデサ買収により同社の2200万人の顧客と数百基の発電所を取得することになる。欧州連合(EU)は7月1日、域内エネルギー市場の規制を緩和し、競争をさらに促す方針だ。
バークレイズ・フォンドスのファンドマネジャー、ペドロ・レアル・デ・アスア氏は、エーオンの買収案撤回について「エネルとアクシオナの買収提案に青信号が灯ったため、エンデサの株主にとって決して悪くない話だ」と語った。
エネルとアクシオナは、エンデサ株を計約46%保有。残りの株式を少なくとも1株当たり41ユーロで買収する提案を行う方針を示している。エンデサの2日株価終値は、前週末比0.04ユーロ安の40.44ユーロ。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=aaW_bFAGhvW8
独エーオンがエンデサ買収断念、一部事業取得で合意
2007年4月3日(火)12時23分[マドリード/フランクフルト 2日 ロイター] 独エネルギー大手エーオンは2日、スペインの電力会社エンデサ買収での敗北を認め、計画の断念を発表した。同時に、エンデサの一部事業取得で2大株主の伊エネルとスペインのアクショナと合意した。
エーオンは総額423億ユーロ(565億ドル)の買収提案を行っていたが、期限は4月3日と迫っていた。エーオンは声明で買収に失敗すると「推測するのが安全」と発表、買収案は失効する見通し。
同じくエンデサに買収提案を行っていたエネルとアクショナは、1株当たりで少なくとも41ユーロの買収価格を提示する見込みだが、エーオンによる買収提案の最終結果が4月10日に明らかになるまでは動きはない、とみられている。
エネル、アクショナとの合意により、エーオンは、現在はエネルが保有するスペイン電力のビエスゴや、イタリア、フランス、ポーランド、トルコの発電所など合計100億ユーロ相当の資産を取得する。
http://money.www.infoseek.co.jp/MnJbn/jbntext/?id=03reutersJAPAN253802
伊エネルとスペインのアクシオナ:エンデサめぐる買収合戦に勝利へ
4月3日(ブルームバーグ):イタリア電力最大手のエネルとスペインの建設会社アクシオナは、スペイン電力最大手のエンデサをめぐって1年半に及んだ買収合戦に勝利する公算だ。両社の買収提示額は434億ユーロ(約6兆 8550億円)を上回る規模。
エネルとアクシオナは2日、現在エンデサが欧州に保有する100億ユーロ相当の資産をドイツの電力最大手エーオンに売却し、エーオンはその見返りにエンデサに提示していた1株当たり40ユーロの買収案を撤回することで合意した。エネルは同日、エンデサの未保有株54%を、少なくとも1株当たり 41ユーロで買い取る方針を示していた。
エーオンの買収案撤回はエネルのフルビオ・コンティ最高経営責任者(CEO)にとって勝利を意味する。同CEOは、同社の130億ユーロに上る現金を欧州や南北アメリカでの買収に利用すると約束してきた。エネルは昨年、フランスの電力会社スエズの買収を試みたが、同社と仏ガス公社(GDF)との合併を支持するフランス政府に阻止され、失敗に終わった。
アンサンジェ・ドゥ・ボーフォール銀行で4億ドル相当の運用に携わるパトリツィオ・パッツァリャ氏(ローマ在勤)は「エネルの株主としては、ほっとしている」と述べ、「買収合戦が終結するまで何カ月も待たされるリスクがあったが、そうした不透明感がなくなった」と語った。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=adq_P6u1.ONU
欧州委、エンデサ買収めぐりスペインを提訴
2007年03月29日06時35分[ブリュッセル 28日 ロイター] 欧州委員会は28日、スペイン政府が、独エネルギー大手エーオンによるスペイン電力大手エンデサの買収に介入したとして、欧州司法裁判所にスペインを提訴する方針を示した。
欧州委は「欧州委が、エーオンのエンデサ買収に関する条件撤回を求めたにもかかわらず、スペイン政府は従わなかった」と表明。
スペイン政府の行動は、エネルギー、輸送、銀行セクターなどの大手国営企業を保護する「経済ナショナリズム」への懸念を高めるものだ、との認識を示した。
訴訟は1─3年以上かかる可能性がある。
エーオンは423億ユーロ(565億ドル)でエンデサの買収を提案しているが、スペイン政府は、エーオンの買収計画に条件を設定。欧州委の指摘を受け、その後条件を一部修正したが、条件の完全撤回を求めた欧州委の命令には従わなかった。
独エーオンの買収妨害、EUがスペイン政府を提訴
日本経済新聞 - 2007年3月29日【ブリュッセル=下田敏】独エネルギー最大手エーオンによるスペイン電力大手エンデサの買収提案で、欧州連合(EU)の欧州委員会は28日、スペイン政府を欧州司法裁判所に提訴した。資産売却禁止などの規制を導入し、買収を阻止しようとしたため。加盟国の保護主義的な動きをけん制する狙いで、訴えが認められれば、スペイン政府は制裁金を科せられる可能性がある。
欧州委は、スペインの規制は資本移動の自由を定めるEU法令に違反すると指摘。報道官は記者会見で「スペイン政府が違法な規制を残しているため、提訴を決めた」と語った。スペイン政府は、欧州委の圧力を受け、いったんは規制見直しを進めたが、エンデサ資産の国外への売却禁止や国産炭の使用義務などは撤廃しなかった。(07:01)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070330AT2M2900B29032007.html