加熱してきたABNアムロ買収戦

 


■「バークレイズ銀行がABNアムロを買収?」の続報だが、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドフォルティスサンタンデールが組む形で、ABNアムロ買収を目指す意向を明らかにした。現在ABNアムロとはバークレイズが独占交渉を行なっているが、この独占交渉は4月18日に非公式期限を迎える。


バークレイズはABNアムロを丸ごと買収することを目指しており、上記3行の陣営はABNアムロを3分割して分け合うようだ。3行で構成するコンソーシアムの戦略を主導しているのはどうやらメリルリンチらしい。



ABNアムロは主に、オランダ、米国、イタリア、ブラジルで事業を展開している。ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドは英国以外に米国でも事業展開しているから、ABNアムロの英国と米国の事業部門を獲得したい意向。フォルティスはベルギーとオランダ資本で形成される大手金融機関なので、ABNアムロの本拠地オランダの部門を獲得するつもりだろう。サンタンデールは、ABNアムロ傘下のイタリア大手銀行アントンべネタとブラジルの部門を獲得したい意向。ずいぶんうまい形でコンソーシアムを組めたもんだ。


  

この写真は、左から、RBSのフレッド・グッドウィンCEO、フォルティスジャン・ポール・ヴォトロンCEO、サンタンデールエミリオ・ボティン会長。写真をクリックするともう少し大きめの写真付き記事に飛ぶ。


ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドサンタンデールは大手金融機関として知られているが、日本ではフォルティスはあまり知られていない。ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドのCEOフレッド・グッドウィンは、バロンズ誌による「最も尊敬されるCEO」に、昨年に続き07年も選出された(06年07年を参照)。サンタンデールの会長エミリオ・ボティンは、新生銀行社外取締役として知られている。

周知のとおり、ビルダーバーグ会議の現議長エティエンヌ・ダヴィニオンにはフォルティス副会長という経歴がある。【2007年版】世界優良企業番付でフォーブスは、フォルティスを37位にランクした。同ランキングでロイヤル・バンク・オブ・スコットランドは13位、サンタンデールは27位、バークレイズは18位で、買収の標的となっているABNアムロは44位。日本の金融機関の中で最上位だった三菱UFJフィナンシャルが40位だから、フォーブスが三菱UFJよりも上位にランクしているのがフォルティスなのである。

3月だったかな、オランダのINGグループが地元金融大手の買収を目指していて、そのターゲットにはフォルティスが含まれており、INGはアドバイザーにゴールドマンとチェースを選んだと報じられていたと記憶してる。また、バークレイズがABNアムロ買収に失敗したら、今度はバークレイズが米銀などに買収される可能性があるとの見方をブルームバーグは伝えているし、ABNアムロ買収戦にHSBCが参入する可能性にも触れているから、今後のABNアムロをめぐる攻防と、そこから波及するかもしれない金融界の再編という動きなど、金融界における買収・統合がこれから騒がしくなっていくのかもしれない。

これらに関連して、フランスやスイスおよびドイツの大手銀行・金融機関がおとなしくしているのかという点にも注目。



ABNアムロロスチャイルドの片割れであるロスチャイルドは今回のABNアムロ買収戦でどう動いているのか気になったりもする。



ABNアムロを買収するのは、バークレイズなのか、メリルリンチが戦略を主導するコンソーシアムなのか、または新たに買収戦に参入するところが出てくるのか、あるいはABNアムロは買収されずに単独で存続することになるのか‥‥この件は動きがあったら続報する予定。


以下に記事を5件。

RBS・フォルティスサンタンデール、買収協議に向け蘭アムロ接触
2007年4月14日(土)10時30分

[ロンドン 13日 ロイター] ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、フォルティス、スペインのサンタンデールが、オランダの銀行ABNアムロに対し、買収に向けた協議に応じるよう求める書簡を送っていたことが明らかになった。

アムロに対しては、英バークレイズが買収に向けた独占的な協議を行っている。

アムロは声明で、可能性を探るための協議開始を求める書簡を受け取っているとし、「取締役会と監査役会は、それぞれの責任に沿って書簡を注意深く検討する」とした。

http://money.www.infoseek.co.jp/MnJbn/jbntext/?id=14reutersJAPAN255496

英バークレイズ:ABN買収のハードル高まる、失敗なら買収対象にも

4月16日(ブルームバーグ):英銀バークレイズのジョン・バーリー最高経営責任者(CEO)は約1カ月前に、金融業界最大規模の買収に向け交渉を開始したが、バークレイズ自身が他社からの買収の対象となる可能性も出てきた。バークレイズはオランダ最大の銀行ABNアムロ・ホールディングの買収に向け交渉している。

バークレイズによるABN買収が成功する可能性はあるものの、買収のハードルは先週高まった。英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)を中心としたグループが、共同でABN買収を目指す意向を明らかにしたためだ。買収交渉を背景に、ABN株は過去1カ月に20%上昇し、時価総額は640億ユーロ(約10兆3500億円)に達している。

バーリーCEOの今後の動きによって、バークレイズが現在の17位から世界6位の銀行に浮上し、すべての大陸に拠点を持つユニバーサルバンクに転身できるかどうかが決まる。失敗すれば、同CEOの指導力への疑問が再燃するばかりでなく、バークレイズの単独存続も脅かされる可能性がある。

オリエル・セキュリティーズのロンドン在勤アナリスト、マイク・トリピット氏は「この大型合併はバーリーCEOの試金石だ」として、「これに成功すれば、同CEOを疑った向きは間違っていたことが証明される」と話す。

メリルリンチのアナリスト、エド・ナジャリアン氏やニュー・スター・アット・マネジメントの運用者ガイ・デブロネイ氏は、バークレイズがABNアムロ買収に失敗すれば、米銀バンク・オブ・アメリカやJPモルガン・チェースから買収対象とされる可能性があるとの見方を示している。

バーリーCEOは身売りの観測を否定するものの、ABNアムロへの買収案自体が、同行が提携先を必要としていることを示唆している。ABNへの提案の条件を明らかにすれば、バークレイズの値段も決まることになり、買い手候補は検討の基盤が得られる。

少ない切り札

BGCパートナーズのシニアストラテジスト、ハワード・ホイールドン氏は「バーリーCEOは国境を越えた業界再編という舞台で、持っている数少ない戦略・戦術カードを切った」として、「これで失敗すれば、買う側から買われる側に転落しかねない」と話した。

バーリーCEOは、英国の個人向け業務の利益の伸び鈍化を補うため、ABNアムロ買収を望んだ。ロバート・ダイアモンド氏が率いる証券部門への収益依存を低めたいとの思惑もあるとアナリストは指摘する。

バーリーCEOと異なり、RBSのフレッド・グッドウィンCEOはABNアムロを他社と分け合うことをいとわない。RBSはスペインのサンタンデール・セントラル・イスパノ銀行(BSCH)とベルギーの金融サービス会社フォルティスとともに、ABN買収を目指している。このような買収は、バークレイズとの合併よりも人員やコスト削減の効果が大きいとアナリストはみている。

ニュー・スター・アット・マネジメントのデブロネイ氏は「バークレイズの買収が成功するとは考えにくくなった」と話した。また、バークレイズによるABN買収にはコスト削減の要素があまりないと指摘した。

バーリーCEOは対抗提案についてコメントを控えた。同CEOは3月27 日の従業員向け書簡で、ABNを買収しない場合も「多数の選択肢と多数の成長機会」があると述べていた。ABNを買収すれば、英国外の個人向け市場での拡大を実現できる。同行とバークレイズは予備的な合意に達したとしているものの、価格はまだ決定されていない。

キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズのアナリスト、ジャンピエール・ランベール氏は、バークレイズもRBSと同様に、ABN買収で他社と協力することができると話す。「バークレイズが買収合戦にとどまりたいならば、ABNの一部資産の売却や共同提案を考える必要があるだろう」と同氏は述べた。

バーリーCEOと同様にユニバーサルバンク構築を目指す銀行もあるだろう。これは、バークレイズが買収対象となる可能性を意味する。デブロネイ氏は、JPモルガンによる買収という観測が再び浮上するだろうと話している。

更新日時 : 2007/04/16 10:32 JST

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=a1QpzEBSnYrc

ABNアムロ、RBS連合からの買収案には応じない方針
2007年4月16日(月)15時11分

[ロンドン 16日 ロイター] オランダの銀行ABNアムロは、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)率いる連合による買収提案に応じない方針。この企業連合が買収に関心を示したことにより、英バークレイズとの850億ドル超の買収交渉が加速する可能性がある。複数の関係筋が明らかにした。

ある関係筋によると、ABNアムロは、RBS率いる企業連合が示す買収案について、詳細を欠いていることや提案が複雑化することなどを懸念しているという。

RBSとフォルティス、スペインのサンタンデールの連合は、ABNアムロとバークレイズの独占交渉が期限を迎える数日前にあたる13日、ABNアムロに対して買収協議に応じるよう求め、財務報告書の開示などを要求したと明らかにした。

RBS率いる連合は、ABNアムロ取締役会との友好的な買収協議を望んでいるが、「より挑戦的なアプローチ」を検討する可能性もあるとされている。

また、ABNアムロは、同連合との協議に入る前に、少なくとも仮の買収額や買収案の骨子について知りたいと希望しているという。

しかし、別の関係筋によると、この連合がABNアムロ買収の関心を示したことを受け、バークレイズが買収交渉を加速させ、ABNアムロとの独占交渉の非公式期限である今週18日にも交渉の進捗状況について投資家に説明する可能性があるという。

http://money.www.infoseek.co.jp/MnJbn/jbntext/?id=16reutersJAPAN255721

蘭ABNアムロの買収合戦、英RBS陣営が勝利の公算−アナリスト

4月16日(ブルームバーグ):オランダ最大の銀行ABNアムロ・ホールディングの買収合戦では、英銀バークレイズが敗れ、英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)を中心とした陣営が勝利を収める公算があると、アナリストらはみている。

RBSとスペインのサンタンデール・セントラル・イスパノ銀行(BSCH)、ベルギーの金融サービス会社フォルティスは13日に、ABNへの買収提案の意向を表明した。アナリストは、この3社連合はABNに1株当たり39ユーロ超を支払うことができるとみる。バークレイズは1カ月前に、ABN買収に向けて独占的交渉に入った。

キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズのアナリスト、ジャンピエール・ランベール氏は16日付のリポートで、「バークレイズは計画段階に戻って、他社と連合を組むか、買収を断念するかを検討する必要があるだろう」と指摘。「最適な組み合わせ」として、バークレイズが米銀バンク・オブ・アメリカBOA)とオランダの金融サービス大手INGグループ、カナダのモントリオール銀行と組めば、最大でABN株1株当たり45.6ユーロを提案することも可能だろうとの試算を示した。

JPモルガン・チェースは16日付のリポートで、連合を組んだ場合のバークレイズの買収成功の確率は60%、単独では30%との見方を示した。また、ABNアムロが単独存続を選ぶ可能性も10%あるとしている。

また、INGのアナリストは、フォルティスはABNアムロの260億ユーロ(約4兆2100億円)相当の事業に関心を持ち、RBSとBSCHはそれぞれ 220億ユーロ相当の事業を望んでいるとの見方を示した。

ABN株は16日、35.58ユーロと10年ぶり高値で終了した。買収交渉が明らかになる前の3月16日に比べると31%上昇している。現在の株価に基づく時価総額は683億ユーロ。

ランベール氏は、1株当たり45ユーロ超の提案は「非常に高いが、買収合戦への参加者が多くなればなるほど、そこに近付くだろう」と述べた。

ベアー・スターンズのアナリスト、ロバート・セージ氏は、ABNの株価はバークレイズの手の届く範囲を超えてしまったとみる。また、サンフォードC・バーンスティーンのアナリスト、アントニー・ブロードベント氏は、さらなる買い手候補が浮上すると予想。時価総額で欧州最大の銀行であるHSBCホールディングスも買収合戦に参加する可能性があるとの見方を示した。

また、INGファイナンシャル・マーケッツのアラン・チボゾ氏はインタビューで、ABNアムロ買収に失敗すればバークレイズのジョン・バーリー最高経営責任者(CEO)は苦境に立たされるだろうと語った。

更新日時 : 2007/04/17 09:15 JST

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=a0WqbrPNu.fg

ABNアムロ株、好業績と買収価格上昇期待で最高値更新(4/17)※

オランダの金融大手ABNアムロの株価が16日に約6%上昇し、35.58ユーロ(48.02ドル)と過去最高値を更新した。同日発表した2007年第1四半期業績が好調だったことに加え、買収相手の提示価格が引き上げられると投資家が期待したためだ。

ABNアムロに対しては英バークレイズ銀行が1株当たり35ユーロ程度とみられる価格で買収を提案。両行は独占交渉期間が終わる18日の合併発表を目指して作業を進めている。

だが、英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、スペインのサンタンデール・セントラル・イスパノ銀行、蘭ベルギー系の銀行・保険大手フォルティスの企業連合が13日に対抗買収を提案。RBS連合の提案は事業の分離を前提としているため、1株当たり40ユーロ近い価格提示が可能だとアナリストはみている。

アムロとバークレイズの経営陣には、株価を上回る買収価格を提示する圧力が加わる。このため両者は、資産売却によって株主価値を高めようとアムロの米リテール銀行部門の売却を検討し始めた模様だ。

アムロとバークレイズの合併成立には規制上の問題のほか、04年以前に不正な中東資金の送金にかかわったとされる問題でアムロと米司法当局が和解することが条件として挙げられている。

アムロが当初の予定より10日早く発表した第1四半期決算では、1株当たり利益(EPS)が65セントと30%増えた。同行は2.30ユーロとする07年通年のEPS目標は十分に達成できるとしている。

(英フィナンシャル・タイムズ特約)

http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/20070417NTE2IFT0517042007.html

バークレイズ銀行がABNアムロを買収?
ABNアムロにダイヤ泥棒