サーベラスのジョン・スノー会長

 


サーベラスの会長ジョン・スノーが2月19日に都内にいたという。「ウィキペディア」によると、スノーがブッシュ政権の財務長官に就任できたのはチェイニー副大統領による提言が大きかったようだ。スノーが06年6月に財務長官を辞任したことで誕生したのが現財務長官ポールソンで、スノーはその後、10月にサーべラスの会長に就任した。


サーべラスといったら、あおぞら銀行、国際興行、昭和地所、さらには西武ホールディングスなどを傘下に収めてきたことで有名な「ファンド」であるが、私も以前「サーベラスが毎日新聞を名誉棄損で提訴」で取り上げたことがある。じつはこの件と関連して、先週あたりから「糸川議員脅迫事件(参照)」として逮捕者が出るなど大きく騒がれている。問題となっている港区南青山の土地を取得したのがサーべラスの子会社で、この子会社とは昭和地所のこと。ここに山口組が絡んでいる疑いが濃いということで、毎日新聞が『米ファンド系不動産 暴力団関係者が関与の疑惑』という記事を06年1月12日の朝刊で1面トップ記事として出したのだが、その1週間後の1月19日、サーべラスは毎日新聞の記事が名誉を棄損するとして、毎日新聞を相手取り少なくとも1億ドルの損害賠償を求めてニューヨーク連邦地裁に提訴した。5月には毎日新聞記者に実弾と脅迫状が郵送されたりしている。


「糸川議員脅迫事件」が騒がれている時期にサーべラスのジョン・スノー会長が日本に来ていたとは興味深いことである。日経新聞によると日本経済についてスノー会長に取材を行なったのが2月19日なのだが、その他にスノー来日のことを取り上げている記事を検索しても出てこないから、スノーがいつからいつまで日本にいたのか不明。しかし「小林ゆたかブログ」の2月20日の活動報告には、東京プリンスホテルにてサーベラスグループ懇談会があったことが記録されている。小林ゆたか自民党所属の参議院議員

 2月20日(火) 活動報告

(前略)
会館事務所に戻り、メールチェックなどを行った後、12時より参議院内の幹事長室にて、執行部会に出席。たまには仕事している写真をホームページに載せますと、青木会長と片山幹事長と写真撮影。その後、東京プリンスホテルへ移動し、サーベラスグループ懇談会に出席する。何度か朝食会でご一緒したクエル元副大統領、スノー前財務長官などに挨拶。
(後略)

上記のようにスノーとチェイニー副大統領はきわめて近い関係にある。そのチェイニーが来日したのは2月20日だ。関連あるのか不明だが、その週末の23日の夜には日興コーディアルがシティグループの傘下になるかもしれないと各紙がいっせいに報じた。前財務長官でサーべラスの会長ジョン・スノーが都内にいた理由または目的を知りたいもんである。たんなる懇談会のためだけに来日したのではあるまいと想像する。

スノー前米財務長官「日本経済に改革効果」

ジョン・スノー前米財務長官(サーベラス・キャピタル・マネジメント会長)は19日、都内で日本経済新聞記者に「日本経済には規制緩和などの改革効果が表れている」と語った。安倍晋三首相も小泉純一郎前首相の改革路線を継続するよう期待を表明した。

――日本経済をどう見ているか。

「良好に拡大している。小泉前首相らは強い指導力を発揮し、規制緩和郵政民営化など困難な改革を成し遂げた。高齢化時代を迎えた日本は、介護、健康管理、製薬などの分野のイノベーション(革新)が、経済成長の原動力となろう」(07:02)

 http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070220AT3S1900Q19022007.html



 スノー財務長官の強欲

鉄道は、数々の顔を持っている。スノーは鉄道再編の時代に何をしていたのか。ユニオン・パシフィック鉄道とペン・セントラルが変貌する時代を縫って、運輸官僚のスノーはのし上がっていった。フォード政権時代の高速交通安全局長を退職すると、かつて自分の法律事務所が差配した民間ビジネスへ戻り、しばらく鉄道会社チェッシー・システムの政界ロビイストとして活動してから、1980年に大鉄道会社CSXコーポレーションの副社長に迎えられたのだ。アメリカは日本と違って天下りが厳しく禁じられていると言われるが、実際は手順を変えた天下り横行社会である。
(中略)
89年にCSX社長に就任したスノーは、2年後に会長・最高経営責任者となって全権を掌握し、そして98年には、政府援助で営業されてきたコンレールをCSXが逆に買収して、ペン・セントラルの資産をいただいてしまった。政府と企業の談合による巧みな税金の盗用である。
(中略)
こうした中、イラク攻撃前にスノーがようやく議会で承認され、2003年2月3日に財務長官に就任した。
(中略)
スノーが財務長官に就任した途端、ウォール街の株価がぐんぐん下がってゆき、ワシントンに大雪が降って「スノーがスノーを連れてきた」と陰口をささやかれ、五大湖で最大のスペリオル湖は24年ぶりという寒さで全湖面が凍結した。凍りついた投資家の心に疑問を抱かせた彼の財政運営能力は、どこに問題があったのか。これは世界経済を左右する重大事なので、詳細を説明しておく必要がある。

CSXからエネルギー部門を買収したエンロンが2001年末に倒産すると、スノーは財界に企業モラルを説教してみせた。ところがその1年後、ブッシュが彼を財務長官に指名すると、彼の不道徳きわまりない過去が次々と明るみに出た。会長職を退任後にホワイトハウス入りした場合には、総額1500万ドルを受け取る協定をCSXと結んでいたからである。スノーが政権の座に就いて会社に益がなければ、このように非常識な退職金協定などあり得ない。CSXが会社ぐるみで国家の金を手に入れようという魂胆だ。

この露骨な利権誘導の退職金協定が報道されると、批判を浴びて狼狽したスノーは、議会が財務長官就任を承認すれば一切の手当てを受け取らないと、急いで同社に通知してみせた。しかし彼がCSXの会長をつとめた12年近くで5000万ドル(ほぼ60億円)もの報酬を得ながら、そのあいだに会社の利益は25パーセントも減少していた。CSXの株価上昇も、ほかの大企業に比べて半分。株主への年間配当率もニューヨーク証券取引所の輸送株の平均配当より35パーセントも少なかった。

スノーの個人的な欲望は、さらに大きな疑問を国民に抱かせた。96年には会社から借金して株を購入できる幹部だけの特権をつくると、スノーは早速2540万ドルを借金して割安株を購入した。ところが2000年CSXの株価が96年より40パーセントも下落すると、CSXはこの制度を廃止して、彼から株を買い戻して借金を御破算にし、スノーは割安株を返却した。取得時に700万ドルだった株は、返却時に400万ドルの価値しかなかった。スノーの大損害をCSXが穴埋めしたのだ。

彼を財務長官に指名し、この過去について批判を浴びたホワイトハウスは「違法ではない」と釈明につとめたが、このメカニズムがエンロンを破綻させたことは全米周知の事実であり、新しい企業会計改革法では企業幹部の腐敗の温床として禁止されているローンだ。彼が得た5000万ドルの報酬とは、会長に就任した91年が報酬160万ドル、13万4000株のストックオプションに始まって、10年後には現金報酬1010万ドルのほか、800万ドルを超える価値の80万株のストックオプション、合計年収ほぼ20億円を取得するまでに報酬が急上昇していた。当然、CSXの労働組合から激しい批判を浴びてきたとんでもない経営者である。

そして2003年3月20日にアメリカのイラク攻撃開始と共に、スノーは大統領に行政命令を出させ、アメリカ国内のイラク資産を財務省が没収すると発表した。それは90年のイラククウェート侵攻以来凍結してきたイラク政府の銀行預金などで、総額20億ドル以上にものぼるイラク国民の金である。これは火事場泥棒に等しい。さらに4月に開催されたG7で、サダム・フセイン時代につくられたイラク債務の削減をフランス、ドイツ、ロシアに要求した。イラククウェートに対する170億ドルの債務のほか、アラブ首長国連邦バーレーンサウジアラビアオマーンカタール、ロシア、フランス、ドイツ、日本などに総額1270億ドル(15兆6000億円)とも推定される未返済金があり、これがイラク復興を妨げるというのがアメリカの言い分だった。しかし長期にわたって経済制裁を強めてイラクが借金を返せないように誘導してきたのは、クリントン政権が企んだ反イスラム政策であり、国連でしばしば非難されてきた。

財務長官の履歴と言動をくわしく記したのは、アメリカがきわめて貧困な計画で経済を動かそうとしている21世紀初頭の現状(新保守主義と呼ばれる好戦的シオニストに誘導された保守本流の粗末な実態)を認識するためである。スノーの前の財務長官オニールを筆頭に、チェイニー、ラムズフェルド、彼らはみな大企業の経営トップをつとめたが、苦難を乗り越えながら会社を育てた叩き上げの実業家ではない。いずれもビジネスの現場を知らず、他人から奪うことしか知らない官僚天下り集団であるところに、彼らの特質がある。ブッシュ政権で実業界の裏を知っていたのは、4半世紀以上も石油と天然ガスのビジネスマンとして活動し、天然ガス会社を経営してきた商務長官のドナルド・エヴァンスだけである。しかし彼の名前はイラク攻撃でもイラク復興でも油田利権問題でも、1度も耳にしなかった。


以上、アメリカの保守本流P.118〜125より抜粋。


エバンズ前商務長官がロスネフチの会長に?


以下にあれこれ。

Cerberus Capital Management Appoints John W. Snow as Chairman

NEW YORK - October 19, 2006 - John W. Snow, the 73rd Secretary of the Treasury of the United States of America, has been appointed Chairman of Cerberus Capital Management, L.P. Prior to becoming Secretary of the Treasury in February 2003, Secretary Snow was Chairman and Chief Executive Officer of CSX Corporation.
"It's an honor to have a person of Secretary Snow's stature join the Cerberus team," said Stephen Feinberg, CEO of Cerberus Capital. "Secretary Snow has worked tirelessly, traveling the globe, to build a consensus on global economic issues. We will benefit enormously from his vast experience in business operations as well as his keen insights into economic trends and forces."
Mr. Snow also held several high-ranking positions in the Department of Transportation during the Ford Administration. Additionally, Mr. Snow served as Chairman of the Business Roundtable, comprised of 250 CEO's of the nation's largest companies. He has served on various corporate and non-profit boards, including Johnson & Johnson, USX, Verizon, the University of Virginia Darden School, and Johns Hopkins University.
Mr. Snow holds a Master's Degree from the Johns Hopkins University and a Ph.D. in Economics from the University of Virginia, a J.D. from George Washington University, a B.A. from the University of Toledo and numerous honorary degrees. He has also served on the faculty of several academic institutions.


About Cerberus:
Established in 1992, Cerberus Capital Management, L.P. is one of the world's leading private investment firms with $16.5 billion under management in funds and accounts. Through its team of more than 275 investment and operations professionals, Cerberus specializes in providing both financial resources and operational expertise to help transform undervalued companies into industry leaders for long-term success and value creation. Cerberus is headquartered in New York City, with offices in Chicago, Los Angeles, and Atlanta, as well as advisory offices in London, Baarn, Frankfurt, Tokyo, Osaka and Taipei. More information on Cerberus can be found at www.cerberuscapital.com.

Media Contact:
(212) 891-1558

http://www.cerberuscapital.com/news_press_release_111406.html

クライスラー買収、欧米投資ファンドが予備協議

【ワシントン=渡辺浩生】自動車大手ダイムラークライスラーの北米部門で経営不振に陥っているクライスラー・グループの買収に、サーベラス・キャピタル・マネジメントなど複数の欧米投資ファンドが関心を示していることが23日、分かった。

英紙フィナンシャル・タイムズによると、サーベラスのほかカーライル、アポロマネジメント、ブラックストーンなど欧米の複数の投資会社が、すでにダイムラーとの間で予備的な協議を行っている。

業界筋も、「サーベラスは社内の自動車担当チームを増強してクライスラーの買収に強い関心を持っている」と語っている。同社は企業再建投資を積極的に手がけ、日本のあおぞら銀行西武ホールディングスに出資。昨年、米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)の金融子会社GMACの株式も大量取得。スノー前米財務長官が昨年10月、会長に就任した。

ダイムラーは今月、経営不振に陥ったクライスラーについて「あらゆる選択肢を検討する」と言明。米投資銀行JPモルガン・チェースが顧問として売却を含めた再建策を模索している。

GMもライバルメーカーの買収に興味を持ち、ワーゴナー会長がダイムラーのツェッチェ最高経営責任者(CEO)と昨年12月以来、協議を重ねてきた。このほか仏ルノー日産自動車連合や韓国の現代自動車も浮上したが、両社とも「関心がない」と否定している。

一方、ロイター通信によると、ダイムラーは売却先の候補に対して、クライスラーの財務内容について詳細な説明を準備しており、交渉が近く本格化する見通しとなった。

(2007/02/25 01:06)

http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070225/sng070225000.htm

[糸川議員脅迫]「国会質問封じとはとんでもない」
糸川議員脅迫で前市長逮捕
糸川議員脅迫、組幹部同席させる──逮捕の会社役員
毎日新聞記者、糸川議員の取材録音渡す 処分へ