全日空ホテルの行方

 


全日空ホテルが外資の手に落ちそうだ。全日空は直営する国内の13のホテルを年度内に売却する予定だと昨年12月に発表していたが、そろそろその売却先が決まる頃。


全日空がホテルを売却すると発表した当時、その売却額は1000億円程度になる見込みだといわれていたが、売却額と売却先、その後の収益はどうなるのか。

入札には30件ほどの申し込みがあったようで、FTの記事によると、入札に申し込んだのは、ブラックストーン・グループゴールドマン・サックスメリルリンチ、ローン・スター、ジョージ・ソロススターウッド・キャピタル、ドイツ銀行‥‥といった面々で、毎度おなじみの名前が並んでいる。



全日空が売却するホテルは以下の13。


東京全日空ホテル、ストリングスホテル東京、成田全日空ホテル、千歳全日空ホテル、札幌全日空ホテル、富山全日空ホテル、金沢全日空ホテル、大阪全日空ホテル、広島全日空ホテル、博多全日空ホテル、万座ビーチホテル&リゾート、沖縄ハーバービューホテル、石垣全日空ホテル&リゾート。


全日空は以上の13か所の土地や建物をすべて売却する方針。これまでの「外資系ホテル」というのは、土地や建物の所有権を日本企業がもちながら、ホテルの運営を外資に任せるといったスタンスが多かったはずなのだが、全日空は土地や建物をすべて売却するのだから、これはもっと注目されてよい大きな資産取引である。売却先が決定したあとに「全日空ホテルが外資に買収された!」とか騒いでも手遅れ。

入札だから誰の手に全日空ホテルが落ちるのか分からないが、FTが名前を出した入札者リストには外資の名前しかないため、日本資本がこの入札に参加するのか不明だし、計算高い外資系のヤツらが、当初の売却見込み額1000億円を上回る金額で入札してくるのなら、全日空ホテルにはそれなりのうまみがあるという判断に基づくものだ。日本企業はこの入札に参加してるのだろうか。


07年の東京に外資系ホテルが押しよせてくることをホテル業界では「2007年問題」というらしい。プリンスホテルの売却も進んでいるし、ビル・ゲイツとアルワリード・ビン・タラール王子の大富豪が共同でフォーシーズンズホテルを買収したりもしている。フォーシーズンズホテルは東京都内に「フォーシーズンズホテル椿山荘東京」と「フォーシーズンズホテル丸の内」を運営しているから、これら東京のホテルもゲイツらの手に渡ったことになるのだろう。先月末にはシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルがモルスタに買収されると報じられた(参照)。つまり東京を中心とするホテルの勢力図に大きな変化が生じている。これを「日本資本対外国資本」と捉えた場合、変化後の勢力図がどのようになっているのか、日本における“ホテル戦争”の行方が気になるところでもある。



驚きより「顧客感動」〜帝国ホテル・小林社長の戦略
【書評】ホテル戦争―「外資VS老舗」業界再編の勢力地図
「ホテル業界の2007年問題」が意味するもの


以下に記事を。

Bid fever for ANA hotel portfolio
By Mariko Sanchanta in Tokyo and Jim Pickard in London
Published: March 21 2007 02:00 | Last updated: March 21 2007 02:00

All Nippon Airways' Japanese hotel portfolio has drawn 30 bids, reflecting the unusual opportunity the sale provides for foreign real estate investors keen for Japanese exposure.

ANA is selling 13 hotels and is now expected to pocket $2.1bn in proceeds, more than double what analysts forecast three months ago when the airline put the hotels up for bid.

ANA, advised by Jones Lang LaSalle and Nomura Securities, has shortlisted about 10 bidders, including Blackstone Group, Goldman Sachs, Merrill Lynch, Lone Star, George Soros, Starwood Capital and Rreef, Deutsche Bank' real estate opportunity fund, according to people close to the deal.

An ANA spokesman yesterday declined to comment on the shortlist.

The deal promises to be one of the largest property deals ever in Japan. Analysts expected investors to be somewhat put off by having to bid for ANA's nationwide portfolio rather than individual properties, particularly the airline's flagship hotel in Tokyo, and being bound to retain the existing management at the hotels.

The heavy bidding shows investors' eagerness for a slice of Tokyo's rebounding property market.

"It's a once-in-a-lifetime chance to buy something of this scale in Japan,"said one person involved in the deal.

The bulk of the hotels are in smaller cities such as Hiroshima. The portfolio does not include 18 ANA-brand hotels that the airline holds no equity in. The sale is part of ANA's effort to focus on its core aviation business. It is understood that the proceeds will be used for aircraft investment.

After being trapped in a downward spiral for more than a decade, Tokyo property prices are hovering at a rate not seen since the heady asset bubble era. The exorbitant prices of recent property transactions in Tokyo have signalled a tentative end to the persistent asset deflation that dragged the nation's economy into recession in the early nineties.

KK daVinci Advisors, which runs Japan's biggest private real estate fund, last year scooped up an office building in Tokyo for Y200bn ($1.7bn), the highest price ever paid for a single property in Japan.

Investment banks and funds have been steadily investing in hotels and resorts in Japan, which have traditionally underperformed global standards, due to Japanese operators' slow adoption of yield management and other standard tools of the industry. Last year, Goldman Sachs' hotel real estate investment trust debuted on the Tokyo Stock Exchange.

Copyright The Financial Times Limited 2007

http://www.ft.com/cms/s/9cfd85b0-d752-11db-b9d7-000b5df10621.html

優良資産踏み台に飛躍期す ANAのホテル売却
12/09 09:03

■一気にJAL引き離し

全日本空輸(ANA)が8日、直営13ホテルの資産売却する方針を決めた。ホテル事業はこれまで、中核事業と位置付けられ、ブランド戦略でも大きな役割を果たしてきた。しかも業績は順調だ。不振事業を切り捨てるのではなく、中核事業の再編に踏み込むことで、本業の「航空」に経営資源を集中する強い姿勢を示したといえる。

これに対し、ライバルの日本航空(JAL)もホテルや社員寮など資産売却を急いでいる。ただ、JALの場合は経営再建に向けた“公約”である2007年3月期の黒字を確保するための苦肉の策に過ぎず、その差は明白。ライバルがもたつく間に国内線の地盤をさらに強固にし、一気にJALを引き離そうという思惑も透けてみえる。

ANAではすでに英国系インターコンチネンタル・ホテルズ・グループと設立した合弁会社に運営を委託しているが、新たに土地、建物を売却する。売却後も合弁会社が運営を継続。今年度中に入札で売却先を決定し、売却額は1000億円程度を見込んでいる。

ホテル事業は06年3月期に46億円の営業利益を上げているが、それでも、あえて手放す背景には、本業の航空事業の競争環境が一段と厳しくなるとの危機感がある。

2009年には羽田、成田空港が相次ぎ拡張される。自らのビジネスチャンス拡大の機会であると同時に、これまで十分な便数を確保できていなかった国内外のライバルが一気に攻勢をかけてくるのは確実だ。ANAとしても高効率の最新鋭機の導入などを急ぎ、競争力はさらに高める必要に迫られている。

不動産を切り離すメリットはほかにもある。大手総合不動産の幹部は、「保有不動産の大胆な処分は、国内大手企業で共通した動きになりつつある。そのきっかけは、村上ファンドによる阪神電鉄の買収だった」と指摘する。村上ファンド阪神に目を付けたのは、有効活用し収益性を高めても売り払っても、多額のリターンが期待できる優良不動産を多く保有していたことにある。

保有する不動産を有効活用できないでいると、ファンドなどによる買収リスクは格段に高まる。そんな危機感が企業を不動産売却へと駆り立てている。

ANAの売却資産について、すでに多くの総合不動産、大小の不動産投資ファンドが強い関心を示している。高い収益が期待できる優良物件は都市部で枯渇しているだけに、好立地の東京全日空ホテル、大阪全日空ホテルなどは、落札価格が跳ね上がる可能性が高く、「売り時」であることは間違いない。

ANAに限らず、経営から不動産を切り離そうという動きは今後も一段と加速していくことになりそうだ。(高山豊司)

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/other/30856/

全日空、国内の全13ホテル売却へ・総額1000億円超
日本経済新聞 - 2006年12月8日

全日本空輸は国内に保有する全13ホテルの土地、建物を売却する。不動産会社や投資ファンドなどを対象に月内に入札を実施、今年度中に売却先を決める。売却額は少なくとも1000億円を超える見通し。今月からホテルの運営を英系ホテル会社との共同出資会社に移管したのに続いて資産も手放し、航空事業に経営資源を集中する。

売却するのは、旗艦大型ホテルの東京全日空ホテル(東京・港)や代表的なリゾートホテルである万座ビーチホテル&リゾート(沖縄県恩納村)など直営13拠点の土地や建物。運営受託や営業協力している18カ所は土地・建物を持っておらず、対象外になる。中国とオーストリアに持つ海外2拠点は引き続き自社で運営する。 (07:00)

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20061208AT1D0708107122006.html

ANA、ナショナルフラッグに 狙うは航空ビッグバン